今日はルネサンス音楽史の最後の記事になります。この中に楽器の音楽(器楽)を見てみましょう。 今までの音楽史の記事に勉強したのはほとんど声楽ばっかりでしたね。 宗教音楽の教会のミサ音楽や讃美歌など・・ 世俗音楽のシャンソンやモテットやマドリガーレなど。 ルネサンス音楽と言えばやっぱり声楽とポリフォニーです。 中世やルネサンスの音楽を勉強しますと声楽はどうしても中心になります。 しかし、当時に楽器もよく使われていましたよ。 歌や踊りの伴奏に楽器が使われていました。 例えば、町の広場や酒場・・お城の貴族のディナーパーティーの時にも・・ 教会ではオルガンもよく使われていました。 当時人気が高かった楽器は鍵盤楽器ヴァージナルやチェンバロ、弦楽器やリュート(Lute 洋梨の形する昔のギター)や様々な管楽器です。 同族楽器による合奏はホール・コンソート、異なった種類の楽器による合奏をブロークン・コンソートといいます。 1550年までに楽器の為のソロの曲や楽器のアンサンブルの曲はまだ少ないでした。楽器のための楽譜もほとんど無いでした。 1550年まで楽器の2つの使い方を見てみましょう。 1.歌や踊りや劇の伴奏 演奏は即興がとても多いでした。楽譜の代わりに耳コピーでした。 2.多声の曲に1つの声部を楽器で奏でる 4声の曲に1つの声部を楽器に奏でてもらうことも多いでした。 どちらの使い方でも使う楽器が特に決まっていなかったです。 1550年ぐらいから新しく生まれた3つのスタイルの音楽を見ましょう。 ★ ①歌から生まれた音楽 ★ ②踊りから生まれた音楽 ★ ③即興から生まれた音楽 ①歌から生まれた音楽 カンツォーナ(Canzona da sonar) カンツォーナは楽器の為に作曲された歌のような曲です。カンツォーナはイタリア語で歌曲を意味します。 カンツォーナはソロの楽器又は楽器アンサンブルのために書かれています。 軽やかなフランスのシャンソンを楽器で奏でることをイメージしましょう。(音楽史9ルネサンス中期 >>) 軽い、速い、リズミカルな曲が多いです。テーマのリズムは長い(1)ー短い(1/2)ー短い(1/2)のパターンが多いです。 (長いー短いー短いのパターンがバッハのフーガにもよく出てきます) ジョヴァンニ・ガブリエーリ (イタリア、ヴェネツィア楽派 1555年 – 1612年)のカンツォーナを聴きましょう。 カンツォーナの楽譜はこちら >> リチェルカーレ (Ricercare) リチェルカーレは「探し求める」意味するイタリア語です。 先ほどの軽やかなカンツォーナはシャンソンから生まれた曲ですが、リチェルカーレはモテットを楽器で奏でる曲です。(音楽史9ルネサンス中期 >>) カンツォーナより真面目な印象で「探す」ような雰囲気がします。これはバロック時代に「前奏曲」になります。 メルキオル・ノイジドラー(ドイツ1531年-1594年)のリュート為のリチェルカーレを聴きましょう。 ②踊りから生まれた音楽 パバーヌ と ガリアルド(Pavane - Gaillarde ) パバーヌ と ガリアルドは遅い2拍子と速い3拍子の踊りの組「セット」です。 このような踊りの組はバロック時代に組曲になります。 1550年から踊る音楽は段々増えます。アルマンドやクーラントの踊りも作曲されています。 ティールマン・スザート(Tielman Susato) パバーヌ と ガリアルド Pavane Gaillarde La Donne ③即興から生まれた音楽 トッカータ - Toccata 即興は特にリュート(昔のギター)と鍵盤楽器でよくされていました。 作曲家たちが1550年から即興の分をちゃんと楽譜の形に残します。 クラウディオ・メールロ(イタリア1533年ー1604年)のトッカータ を聴きましょう。 トッカータはイタリア語の動詞トカーレ(触る)から来ました。弦や鍵盤を自由に触るということですね。 ほかに即興のスタイルから生まれた曲は幻想曲(ファンタジー)です。 ソナタと初めての強弱 音楽史10にヴェネツィア楽派と分割合唱の話をしました: ・・ヴェネツィアの聖マルコ寺院はとても大きいな教会です! 本祭壇の両側には、2つの聖歌隊席があります。それぞれにオルガンが1台も備え付けてあります。 作曲家たちがは合唱団を二つの部分に分け、それぞれの合唱団やオルガンを交代か同時に利用して曲を作りました。 教会の中にこのスタイルを聴くと立体感、ワイドなステレオの効果があります・・音楽史10の記事 >> このワイドステレオようなスタイルは歌曲だけではなく楽器の曲にも使われていました。 ヴェネツィアではアンサンブルを2つのグループに分けていました。 2つのグループが時々ひとり・・時々合わせて演奏します。 そして、ここでは初めての楽譜に強弱が表示されます! 1つのグループが演奏すると弱い音量・・2つのグループが同時に演奏をしますと強いフォルテに演奏します。 ジョヴァンニ・ガブリエリ ピアノとフォルテのソナタ を聴きましょう Giovanni Gabrieli - Sonata pian' e forte (1597年) イギリスのルネサンス音楽 ヴァージナル楽派 イギリスのルネサンス音楽のヴァージナル楽派はピアノを弾く人に大事な音楽史です! イギリスはエリザベス女王(即位1558年~)の時代に文化や音楽が開花します。 ロンドンではシェイクスピアの演劇が上演されて、人々はダンスや音楽に熱中しました。 楽器では特にチェンバロ・タイプの鍵盤楽器(イギリスではヴァージナル)が多いでした。 鍵盤楽器のブームになりました! これのお陰で、鍵盤楽器の為の曲がたくさん作曲されました。 イギリスの作曲家たちの素晴らしい鍵盤楽器曲のスタイルはバロック時代にドイツやフランスやイタリアに広がりました。 チェンバロ チェンバロは鍵盤の先の爪で弦をはじいて音を出す楽器です。 イタリア語はチェンバロ、フランス語でクラヴサン、英語でハープシコードと言います。 1段鍵盤から2段鍵盤に加えて複数の弦列を持つものなど様々なタイプがあり、国や時代によっても工法や形が異なります。 ヴァージナルは長方形の箱型か5角形の楽器を指します。(以下の写真) ヴァージナル楽派と呼ばれる作曲家の代表は: ★ ウィリアム・バード(1540年~1623年) ★ ジョン・ブル(1562年~1628年) ★ オーランド・ギボンズ(1583年~1625年) ヴァージナル音楽には世俗音楽の旋律による変奏曲や舞曲、ファンタジアなどの楽曲があります。曲はとても多くて素晴らしい音楽です。 ウィリアム・バード(William Byrd)の「鐘」(The Bells)という曲を聴きましょう。 曲の楽譜はこちらへ この記事はルネサンス音楽の最後の記事になります。 最後まで読んでくださってありがとうございます。 ルネサンス音楽を少しでも魅力的に感じられるようになったら嬉しいです。